vpl_bubin’s blog

気に入らなかった文章(私たちはいったいどのような存在ということになるのか?)

 まず、とある本を読んでいる途中でこの一文に出会いました。このようなブログで気に入らない理由をくどくど書いてはいますがこの本を貶める意図ありません。もし紛れ込んでいたらすみませんが無視してください。

 書くきっかけになった一文は、

サピエンス全史(上)著:ユヴァル・ノア・ハラリ 訳: 柴田裕之 第11章p251から

だが、今日の文化の大半は、帝国の遺産に基づいている。もし帝国は悪いと決まっているのなら、私たちはいったいどのような存在ということになるのか?


 問題の一文について書く前に読むきっかけになったわけなど。なぜこの本を読んだかというと、

1.某同人STG第17弾の「東方鬼形獣」種本と噂されていた。※1

2.下記事の座談会でさっとあげられていた。

『風の谷のナウシカ』を今、読む意味。(前編) | アマナとひらく「自然・科学」のトビラ | NATURE & SCIENCE ←良記事です。

と、マイルールの『複数の分野、界隈でお勧めされたり好感触であったりした事柄は調べる機会を設ける。』という項に引っかかったためです。なかなか本については適用する機会が少なく期待感を持って読み始めました。
 途中で作者来歴を見て「あれっ」と、作者をチベット仏教の最上位クラスであるダライ・ラマの方が書いたと勘違いしていて東洋脳※2で読み始めていたがどうも違う、どうもどころでは無く明らかにチベット仏教※3な作者ではなかった。
 95ページで唐突に出てくる「スンギル」。「スンギルでの発見が立証しているとおり」と言われてもピンとこない。このまま検索にかけてもキャラクター名※4が出てくるので単語を追加するか"Sungir"で調べるとよい。
 小話や例えの類がアメリカの地名だったりフランスの企業名だったりする。他の翻訳書で出てこないこともないギリシャ神話やらなんやらならまだしもここらの知識には疎く、西洋脳※2にしても苦労した。

 そろそろ本題に入ります。前から順に読み進めていた途中で思ったことを脚色しながら書いていきます。p237から引用 ※は作者

今の時代、政治的な罵り言葉のうち、「ファシスト」を除けば、最悪なのは「帝国主義者」だろう。※5

 ファシズム全体主義)は優生学と結びついてナチスドイツの⋯と特にヨーロッパ※6のあたりでかなり嫌われているイメージはありましたが残然ながら※7帝国主義については分からなかった。帝国は文化的アイデンティティと独自の領土をもったはやりの複数の民族を抱える国なのだそうで言われてみると民族自決とは対立しているとは気が付いた。その後、現代の主な帝国主義批判を挙げその問題点を書いていたり、確かに戦争や虐殺など悪印象をもつことも書いてあったが例の文の「今日の文化の大半は、帝国の遺産に基づいている」に繋がることを書いてあり前文(p237からの引用文)のことはすっかり忘れてしまっていた。

 歴史を善人と悪人にすぱっと分け、帝国はすべて悪人の側に含めるというのは魅力的な発想だ。帝国の大多数は血の上に築かれ、迫害と戦争を通して権力を維持してきたのだから。だが、今日の文化の大半は、帝国の遺産に基づいている。もし帝国は悪いと決まっているのなら、私たちはいったいどのような存在ということになるのか?

再びp251から1段落。気になった点

1.「歴史 」ー気にならない
2.「善人と悪人にすぱっと分け」ーそんなことしないと言いたいがしてる。※8
3.「帝国はすべて悪人の側に含める」ーそんなことしない。名君だっていると聞く。
4.「というのは魅力的な発想だ。」
  ーIt is fascinating idea that we make sentence that is good for translation.
5.「帝国の大多数~だから。」ーネット情報で裏取りしたくなる。
6.「だが」ー気になる。なぜここに入るのだろうか。
7.「今日~いる。」ー日本の帝国時代を日、アイヌ、朝鮮、台湾の本省人※9、台湾原住民や満州五族協和で謳われる民族などがいた時代のみ※10だとすると「大半」ではないと思う。少なくとも前編では日本の「に」も出てこず、せっかくブログ書くのだからとつけた難癖。
8.「もし帝国は悪いと決まっているのなら」ー前述のとおりp237の文はすっかり忘れてしまっていたためこの突然な断定口調に驚いた。

9.「私たちはいったいどのような存在ということになるのか?」ーこの後帝国の遺産を排斥しようとする団体の愚かさを書いてあることからも、作者はこれに対し「帝国に良い面もあり悪だと決めることはできない。だから帝国の遺産の恩恵を受けて生活してる私たちも悪ではない。」と返してもらいたいのだろう。しかし、知識の無さとこの第11章に限らず全体的に東アジアの例が少ないことによる他人事感とこの段落全体に見え隠れする善悪二元論※11が気に入らなかった。もう一度言うと、悪い物事から生まれたものを享受したくない思う人※12がいるのは分かるが反語を使い尚早に立場を決めさせ※13思ってもいない関係性※13の返しを要求されてたように感じ気に入らなかった。

 


作者の主義主張とはずれたところしか引用していないので同じ節最後のp254から。

 文化の継承にまつわるこの厄介な問題をどのように解決すればいいのかは、誰にも
はっきりとはわからない。どの道を選ぶにしても、問題の複雑さを理解し、過去を単純に善人と悪人に分けたところでどうにもならないのを認めるのが、第一歩だろう。もちろん、私たちはたいてい悪人に倣うと認める気があれば、話は別だが。

 引用文1(p237)と引用文2(p251)をもっと近づけてくれていたら良かった。ともあれ、ブログ一本かけたので良書。
 サピエンス全史(下)はもともと上巻と下巻の間に読もうと用意していた
『われ思う、故に、われ間違う―錯誤と創造性』
著:ジャン=ピエール・ランタン 訳:丸岡高弘 を読み終わってから読みます。

 

1.同じハラリ氏の『ホモ・デウス』かもしれない。

2.造語。検索して出てくる本とは無関係

3.チベット仏教についてはクインテットが制作しエニックスより発売された「天地創造」のラサでのイメージと時々漏れ伝え出てくる中華人民共和国チベット弾圧※※1のネットニュースついでぐらいでしか知らない。これについてもかなり期待していた。

4.なにか書きたいが書けない。

5.この構文を見るたびに「ファシストに次いで帝国主義者は」と素直に書いて欲しくなる。原文(ヘブライ語が初出だがきっと英語の訳)はどんな文なのだろうか。

6.西洋とヨーロッパの表記ゆれ。西洋の中でも西欧の方が敏感なイメージがある。

7.残念な思いをしない為にも本を読んでる。浅学ながらとは書かない。無学だから。

8.軍部大臣現役武官制を悪用し内閣を総辞職に追いやった人はもれなく悪人。

9.この名は最も早くとも台湾光復より後のはずなのでおかしい。

10.古墳時代飛鳥時代の大和政権とかどうだろう。

11.これまでもその影を見せることはあったが、作者とは対立する言説であったりして内在化させることはなかった。

12.例えばこのブログ主

13.ざっとネットで調べたところ現在に続く帝国主義批判は1900年代からある※※2ようだが、一般読者がそれ以前のことを非難することは法令の効力をその法の施行時以前には遡って適用させるようなナンセンスなことではないだろうか。また、様々な時代の帝国すべてを十把一絡げに扱いたくない。

14.善悪はその生まれに関係なく、決めたいのであれば一つ一つ議論していかなければならない。 ※12と矛盾しない。

 

※※

1.ウイグル自治区の方がよく聞く。

2.レーニンの『帝国主義論』が1917年だそうでそこからの推測。